本当は恐ろしい追憶
2016年12月2日。大腸癌の切除手術を終え、妻が無事に退院した。
退院。手術成功。
喜ばしい響きなはずだけど。。
心は決して晴れる事が無かった。
ほんの1ヵ月前までは癌になるなんて。
ましてやステージ4で治る見込みがない程に進行してるなんて想像もしなかった。
半年前までは新しい家族を迎える期待をして。
男の子だと知って震えるほど喜んで。。人生最高の時を間違いなく迎えていた。
現実を考えると気が狂いそうになるくらい辛いから。
無我夢中で最適な病院を探して。
癌治療について猛勉強をして。あまりに低い5年生存率。。そしてまた、さらに厳しい現実を知る。
抗がん剤治療がきっと効く。ダメなら免疫療法がきっと効く。
根拠のない自信で気持ちの靄を振り払っていく。
退院2日後。家の前に流れる荒川の河川敷。
肝臓の転移癌には何もしてないから。退院後も高熱は続く。ますます痩せていく。服はだぼだぼ。
でも身体を動かした方がいいと思って。ゆっくりゆっくりお散歩。
ほんの5分で引き返す。でもこれで充分。
お爺ちゃん、お婆ちゃんになって。子供達が巣立って。この河川敷をふたりでノンビリと散歩して過ごすのが夢だった。
この時はまだ諦めてなんかいなかったけど。
治すためなら何でもする。
決して心は晴れない。でも。まだ雨は降っていなかった。