み~んなみるる 班長
なぜ、班長は問題なのか?
数人の上級生に囲まれて何かと思ったら歌を披露しろと言われてしまった。
まだ仕事中だが、裏庭だ。
棟からは離れていて班長と言った上役の人も見当たらない。
持っていたゴミが勝手に処理されてしまう。
代わりにと言われ、大丈夫だらと迫られて断れなくなっていた。
歌うのは好き。
南の森では、いつだって歌っていた。
大好きな森の仲間たち。
それにカーギー
ショウ…
みんなどうしているんだろう。
〔シク…シク…。〕
誰かの泣き声…
何だが急に寂し気分になって自然と悲しい歌を歌ってしまっていた。
〈綺麗な歌ね…もの悲しくって…何だかますます悲しくなってきちゃった。〉
しんみりとなってしまって少し落ち込む。
歌って良かったんだろうか…
〔何だか家の事思い出しちゃった…。〕
「ごめんなさい。」
〔何で謝るのよ、ありがとう。
涙が出たら…何だかスッキリしたわ。〕
え…?
先輩の巫女は何だか目を赤くしながら晴れやかな様子でお礼を言って去って行った。
喜んでもらったみたい。
なら良かったけど…
『パチパチパチ…。』
急に拍手の音が聞こえる。
「あっ。」
まさかっ、と思たが、立っていたのは、またもやジュンだった。
『やだな…酷い。
そんなあからさまに嫌な貌する…?』
「何だっていっつもっ。」
『それはこっちが聞きたいね。
まさかって思ったらやっぱりなんだよな…。』
ジュンはすっと近づいてきたかと思うとジッと私を見下ろした。
「なっ、何…?」
『綺麗な歌声だったね…
それに、さっきのみんなは癒さたみたいだったよ。』
「え…?」
『実を言うと俺も…何だか体が楽になった気がする。
君は癒しの巫女なんじゃないの…?』
「何言ってるのよ。」
『はははっ、そんな恥ずかしがらなくたって…本当の事なんだから…。』
「な/////っ、勝手な事ばっかり言って…。」
ジュンは良い人なんだろうけど、いつだって私を揶揄ってくる。
『褒めたのに、なんで怒るの…?』
「ぶーっ。」
つい癖でそんなはしたない仕草を…
ジュンは驚いて目を見開いていた。
「あ…。」
まずいっ!
ついつい相手の身分を忘れてしまっていた。
『クッ…ハハハハハッ…ハハハハハ…。』
だが、彼は気分を害した風もなく笑い転げていた。
「あっ、違う。 今のは…。」
『アハハハ……そう言えば、最初にあった時もそんな顔して……。』
え…?
そうだったっけ…
一瞬ギョットしたが、済んだことは仕方がない。
「誰にも言わないでよ。」
『ふふっ…どうしようかな…。』
潤はそんな事を言ってますます悪戯っぽい表情を浮かべていた。
◇◇◇◇◇
サトを探していたら、思た通り…
すれ違った上級生にアチラだと教えられた。
明らかに潤んだ眸。
見覚えがあった。
『きっとあの人達、サトに歌わせたに違いないわよ。』
「そうね。」
『あら…知ってるの…?』
「配給先でも歌わされてるから…。」
『配給先…?』
「南じゃ知らない人の方が少ないんじゃないかな…
いつだって歌ってくれって言われてる。」
『…なんだぁ。
サトは何処でもそうなのね。
仕方ないか…私もサトの歌声が大好きよ。
不思議と体が軽くなる気がするわ。』
それはよくわかった。
癒されるんだわ。
本当に不思議。
まるで…
『あっ…何あれ…?』
言われてみれば遠くにサトの姿が…
そして、側に誰だか知らない男が立っていた。
『ちょっとっ!!』
袖を引っ張られて引き寄せられる。
友人は興奮している様だった。
『あの男の人…何だかキラキラしていない?』
「お金持ちそうに見えるわね。」
『やだ、サトたら、あんな素敵な男性と密会…?』
そう思うのも無理はない。
だって、サトとその男性は笑いあって親しそうだった。
私ですら、もしかして…っと思ったくらいだった。